Mr. ブレット

 漱石は第3の下宿でこのブレット家に滞在している。

 ブレットは文学には全く造詣がなく、漱石は嫌みの手紙を友人に書いている。だが気持ちの優しい人で、家主と下宿人を越えた付き合いをやっており、一緒に観劇に出かけたりもしている。
 ヴィクトリア女王の葬儀の列を見に一緒に出かけ、背の低い漱石はブレットの肩車からいかにも英国スタイルで見物している。未完の小説『明暗』には、この時の体験が潤色され描かれている。

 漱石の『倫敦消息3』には、ブレット家の女中ペンのコックニー・イングリッシュに参ったと言う記述もある。漱石はブレット家が余り教養がないので、もう少し文学的素養のある英国人家庭に移りたかったが、経営していた女学校でインフルエンザが流行閉鎖。夜逃げ同然、漱石は仕方なしに第4の下宿(ステラ・ロード)に移ったのである。


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